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9月第一例会のご報告(2015/09/25)
開催報告『9月第一例会広域政策探究例会』
高崎移住計画2015 in TOKYO~居・職・住から考えるTAKASAKIという選択~
■日時:2015年9月12日(土)13時30分~16時30分
■会場:パソナグループ本部ビル8階ホール(東京・大手町)
■参加者:240名
■参加者の在住地(多数順):東京都、群馬県、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、長野県、大阪府、北海道
■開催趣旨:
―10年後、あなたはどこで暮らしていますか?
"地方で暮らす" という選択肢が "人生の新しい価値" になると信じて
毎年1万2000人を超える人々が高崎市から住所を後にし、その1割を超える人々が東京都に転入している。その多くは10代後半から20代前半の若年世代であり、そのため高崎市の生産年齢人口は年々減少傾向をたどり、2010年からの30年間で約24パーセントの生産年齢人口が失われるとの推計が出されている(国立社会保障人口問題研究所2010年発表)。そして、その結果として2040年には高崎市の人口の2.8人に1人が65歳以上の高齢者になると考えられている。さらに、日本全体に目を向ければ、地方から出生率が全国で最も低い東京都に人口が集中することにより、我が国全体の少子高齢化にも拍車をかけている。
これら地方の人口減少問題は、最近では「地方消滅」(日本創生会議人口減少問題検討分科会「増田レポート」2014年発表)という言葉でさまざまな場面で取り上げられ、この国から多くの「ふるさと」が失われる可能性が指摘されている。この「地方消滅」問題は、地方の大きな政策課題であるとともに、我が国全体で見ると、即ち、この国が持つ豊かな資源や自然環境が失われることにも繋がり、そのような背景からも、私たちは今、あらためて「地方で暮らす」ことの価値を見つめ直す必要があるのではないかと考える。
昨年8月、政府が行った調査において、東京都在住者の約4割の人たちが何らかの形で地方への移住を希望しているとの結果が公表されている。そのような中にあって、高崎市が地方移住の受け皿となり、地域のさらなる成長・発展につなげていくためには、行政や市民が地域の中だけでまちを考え自己完結させるのではなく、より広域的な視点により高崎の個性や価値を探究し、そのポテンシャルを積極的に外部に発信していく必要がある。
そこで、その直接的な対象となる東京圏在住者に対し、高崎が地方移住の目的地として、いかなる場所性、地域性そして可能性を有しているのか、その「広域的ポテンシャル」を発信することで、近い将来の移住先としての一つの選択肢を示すことを目的として本事業を開催した。
■事業内容:
<趣旨説明>
現在、日本が抱えている「人口減少」「一極集中」「地方消滅」の各問題、そしてそれに対する東京都在住者の地方移住ニーズ等を紹介するとともに、人がなぜ東京を目指すのか、地方と東京が「Versus」(対抗)の関係ではなく「Value Supply」(価値の補完)の関係を築き上げる必要性等を説いた。
<チェックイン>
東京圏在住者、群馬県在住者、JCメンバー等を含む参加者同士が10名1グループとなり、「参加した目的」「地方移住に対するイメージ」「高崎市に対するイメージ」等についてディスカッションにより共有した。これにより会場内には活発かつ柔らかい雰囲気が作られていった。
<キーノート>
ゲストスピーカーとして日本財団CANPANプロジェクト代表で高崎市出身の山田泰久氏に登壇いただき、「『東京』から見る『出身地』」をテーマに、近年、若手を中心とした地方出身者が東京から地元を盛り上げようと各々特色ある活動を繰り広げている「ネオ県人会」やその活動シェアの場でもある「出身地Day」について解説いただくとともに、東京から見た高崎の立ち位置等についてスピーチをいただいた。
中でも、今般、世界記憶遺産の候補に選定された「上野三碑」の一つである「多胡碑」に記された「羊大夫」(奈良時代に高崎から奈良の朝廷まで日参したとされる豪族)の伝説を活用し、高崎は「元祖遠距離通勤の地」として新幹線や上野東京ラインの利用により東京への通勤・通学が可能であるということをもっとアピールしていくべきではないかとの提言が印象的であった。
<クロストーク「居&住」の部>
「進化する宿場町―IJU者が語る高崎のまち、ひと、コミュニティ」と題し、いずれも高崎(ないし群馬)へのI・J・Uターンの経験を持つ近藤亮氏(㈱パソナ)、金丸美樹氏(森永製菓㈱)、田中清明氏(高崎市企画調整課)、阿部剛志氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱)の4名にスピーカーとして登壇いただき、JCメンバーでもある山田堂雄氏(山一不動産㈱)をコメンテーターに加え、自らの経験を踏まえた上で、IJUターン者から見た高崎の「まち」「ひと」「コミュニティ」について語っていただき、高崎の広域的ポテンシャルを浮き彫りにしていった。
結構な「都会」から本当の「田舎」まで生活スタイルや価値観に合った幅広い選択肢があること、駅を中心にしてまちがコンパクトにまとまっていて生活がしやすいこと、高崎が中山道の宿場町として発展し、昔から多くの人びとを迎え入れては送り出してきたという歴史的背景から、高崎には多様な価値観を持つ「よそ者」を適度な距離感をもって温かく受け入れる文化(宿場町DNA)が息づいており、それによりこの地域への「腰掛け移住」に対して人々が寛容であること、その他、高崎に「住」を構えるメリット、高崎まつりの魅力、保育・医療・災害に対する安心等が語られた。
<クロストーク「職」の部>
「就職、起業からテレワークまで―商都高崎 未来(これから)の働き方」と題し、就職支援の立場から加藤尚氏(ジョブカフェぐんま)、脱サラ起業の立場から新井信之氏(スポーツバー&ダイニングPitch)、ワーキングママと子育て支援の立場から結城奈津美氏(ままえーる)、高崎におけるテレワーク推進の立場から都丸一昭氏(タカサキチ)、以上4名にスピーカーとして登壇いただき、それぞれの経験を踏まえた上で、「高崎で働く」という点にフォーカスし掘り下げていった。
UIJターン人材の需要、東京における群馬へのUIJターン就職(Gターン)支援の内容、起業の点から見た高崎の商圏性、子育て女性のワークライフバランスから見た高崎、テレワークにより広がる高崎の可能性等が語られた。
<チェックアウト>
チェックイン時と同じグループになり、当初感じていたことがこのイベントを通じてどのように変化したか(あるいは変化しなかったか)等についてディスカッションにより共有した。各グループ内でより活発な意見交換が展開されていたこと、さらに「チェックイン」時に比べ、会場内に笑顔が溢れていたことが印象的であった。
<まとめ>
東京都在住者の約4割もの人たちが地方への移住を希望しているといわれている中で、日本は今、「地方創生」というキーワードを掲げ、国家戦略として東京から地方への人の流れを生み出そうとしているが、それは、変わりゆく時代に生きる人々の無意識のニーズの集合体が戦略化したもの、言い換えれば、人がどこに住み暮らすかという究極の「自己選択」にゆだねられた問題が、人々の価値観の変化を通して「国家戦略」になったものではないかとの前置きのもと、本事業の原動力が、今、存続問題が叫ばれている日本全国の「ふるさと」に溢れる豊かな資源や環境を、溢れ出す東京のニーズにぶつけてみたいとの想いにあり、地方の持つ課題と東京の持つニーズとのマッチングこそが本事業の目的であったことが語られ、「最後に想像してみてください。10年後、あなたはどこで暮らしていますか? どんな選択をしたとしてもきっと素晴らしい未来でありますように・・・」とのラストメッセージにより本事業は締め括られた。
■最後に
己の域をこえろ!井蛙(せいあ)大海を"渡る"―
そんな委員会スローガンのもと、昨年10月より1年をかけて取り組んだプロジェクトであり、64年の高崎JC史上初の東京単独例会となった本事業も、多くの方々のご協力により、無事開催・終了することができました。惜しみないご支援・ご協力をいただいたすべての皆さまに、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
当委員会が1年間探究してきたテーマはよりブラッシュアップの上、来年度に引き継がれることになります。高崎JCのさらなる挑戦と発信に引き続きご期待いただくとともに、今後とも変わらぬご支援・ご協力を何とぞよろしくお願い申し上げます。
2015年度広域政策探究委員会 委員長 泉 純平