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3月委員会事業のご報告(2015/04/17)
開催報告『広域政策探究委員会3月委員会事業』
人が戻り、人に選ばれるまちへ―TAKASAKI GETBACK ACTION
■日時:平成27年3月23日(月)19時~21時
■会場:高崎シティギャラリーコアホール
■参加者:260名
■開催趣旨:
GET BACK:【自】(想いを持って)戻る、返り咲く 【他】取り戻す、奪還する
毎年1万2000人を超える人々が高崎市から住所を後にし、その1割を超える人々が東京都に転入している。その多くは10代後半から20代前半の若年世代であり、そのため高崎市の生産年齢人口は年々減少傾向をたどり、2010年からの30年間で約24パーセントの生産年齢人口が失われるとの推計が出されている(国立社会保障人口問題研究所2010年発表)。さらに、地方から出生率全国最下位の東京都に人口が集中することにより、我が国全体の少子高齢化にも拍車をかけている。
そんな中、昨年9月には安倍内閣に、「地方創生担当」ポストとともに、「まち・ひと・しごと創生本部」が新設され、その後11月には地方創生関連二法案が成立・施行された。それにより、昨年後半から「地方創生」というキーワードがにわかにクローズアップされ、また、昨年8月に政府が行った調査では、東京都在住者の約4割が何らかの形で地方への移住を希望しているとの結果も公表された。
これら多くの「地方移住予備軍」について、高崎市がその目的地・受け皿となり、地域のさらなる成長・発展につなげていくためには、行政や市民が地域の中だけでまちを考え自己完結させるのではなく、より広域的な視点により高崎の個性や価値を探究し、そのポテンシャルを積極的に外部に発信していく必要がある。
そこで、行政を含む高崎市民に対し、高崎の持つ価値や可能性を「よそ者」の視点から可視化しこれを再認識してもらうことで、自らが住まう地域への自信と誇りを取り戻し、その価値を積極的に外部に発信しようとする意識を持ってもらうことを目的として本事業を開催した。
■事業内容:
<趣旨説明>
高崎市の生産年齢人口の推移予測や都内在住者の地方移住ニーズを紹介するとともに、人がなぜ東京を目指すのか、地方と東京の関係を「Versus」(対抗)ではなく「Value Supply」(価値の補完)と位置付ける意識転換の必要性等を説いた。
<第1部 講演>
講師として認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの代表理事を務める高橋公氏に登壇いただき、「いま、なぜ『ふるさと回帰』なのか~地方移住のこれからと選ばれるまちの条件~」をテーマに、地方移住の現状、移住者の受け入れが地域にもたらす影響、地方移住を成功させるために必要なこと等を講演いただいた。
リーマンショックや東日本大震災以降、若者の価値観に明らかな変化が生じ、それまでは「田舎暮らし」「ふるさと回帰」は、定年退職後のセカンドライフの位置づけだったのが、近年では都内を中心に20代から40代の地方移住希望者が急増していること、高崎のような東京への通勤圏内にある中核都市では初の取り組みとなり注目度も上がるので、高崎に住めばこんな生活ができるという「高崎スタイル」をぜひ作り上げ発信すべきであること等、力強い言葉が印象的であった。
<第2部 パネルディスカッション>
「"かがやき"が行き交うまち―ゲットバッカーズが語る高崎のポテンシャル」と題し、いずれも高崎(ないし群馬)へのU・I・Jターンの経験を持つ「ゲットバッカーズ」である、阿部剛志氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、金丸美樹氏(森永製菓)、田中清明氏(高崎市企画調整課)の3名のパネリストに登壇いただき、自らの経験を踏まえた上で、「よそ者」の視点から、「まち」「ひと」「しごと」における高崎の「ゲットバックポテンシャル」を語っていただき、9つのポテンシャルキーワードにより高崎の広域的価値を浮き彫りにしていった。
駅を中心にしてまちがコンパクトにまとまっていて生活がしやすいこと、高崎が中山道の宿場町として発展し、多くの人びとを迎え入れ、送り出してきたという歴史的背景から、高崎には多様な価値観を持つ「よそ者」を温かく(それでいて、押しつけがましくなく)受け入れる「宿場町DNA」が息づいており、それによりこの地域への「腰掛移住」に対して人々が寛容であること、東京まで100キロ1時間圏内という立地から、「転職しない地方移住(新幹線通勤)」が可能であることなど、パネリストたちが、ときにロジカルに、ときにエモーショナルに高崎のポテンシャルを語り上げ、来場者の心をしっかりと捉えていた。
<委員会提言>
高崎はインフラや経済・教育の基盤が整い、自然災害も少なく気候風土においても非常に恵まれた環境にある反面、行政を含む高崎市民がこの恵まれた環境が当たり前となっているために、高崎のもつ価値をあらためて意識することが少なく、これを外に対して伝えようとする努力をあまりしてこなかった(それこそが高崎を含む群馬の魅力度・幸福度が全国最低ランクという、地域に満足している私たちが相当な違和感を覚えるこの結果の一因である)との前提のもと、今回語られたような価値を持つこの地域をまずは私たちが愛すること、そして、この愛する地域が持っている価値を進んで外に向かって発信し、さらに大きな地域の価値、ゲットバックヒューマンに繋げること、それこそが私たちの「高崎ゲットバックアクション」である、ということが力強く発信された。
■最後に
アンケートの結果や、事業終了後にご来場の皆さまからいただいた言葉、その後の反響等からも、行政関係者を含む多くの方々が、本事業の発信に共鳴するとともに、自らの行動に繋げようとする意識が見て取れ、本事業の開催責任者として大きな励みとなりました。しかし、これに満足することなく、この先の発信も見据えて、今後さらに勉強を重ねていきたいと思っています。ご来場いただいた皆さまには心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。
(写真)